小津安二郎監督は原節子について次のように語っている。
「彼女とは一昨年の『晩春』以来今度の作品で二度目のおつき合いですが、お世辞でなく本当に巧い女優さんですね。一時世間から美貌がわざわいして演技が大変まずいというひどい噂をたてられたこともあるが、僕はむしろ世間で巧いといわれている俳優こそまずくて彼女の方がはるかに巧いとすら思っている。小手先だけが眼にとまる巧さは本当の巧さではない。その点彼女は自分で納得のいかない演技は絶対にやらない。僕が一つのセリフを注意すれば心理まで訂正するといった非常に勘のいい鋭さを持っている。おそらく日本の映画界で勘の鋭い女優といえば彼女と高峰秀子だけだろう。その意味で今度の僕の作品における彼女の演技は素晴らしい進歩を見せている。今後の彼女への期待は大きい」(「産業経済新聞」昭和26年8月30日)
「僕は過去二十何年か映画を撮ってきたが、原さんのように理解が深くてうまい演技をする女優はめずらしい。芸の幅ということからすれば狭い。しかし原さんは原さんの役柄があってそこで深い演技を示すといった人なのだ。例えばがなりたてたり、子守っ子やおかみさんのような役はあの人の顔立ちや人柄が出来上っていないというそれを「原節子は大根だ」と評するに至っては、むしろ監督が大根に気づかぬ自分の不明を露呈するようなものだと思う。
映画が人間を描く以上、知性とか教養とかいうものも現れてこなければならない。そういう意味でも原さんの演技には内容があるといえる。もちろん原さんが結婚すればまた違った面も出てくるとは思うが……。“原節子は日本人向き”という評、結構、大いに結構なことだ。
実際、お世辞ぬきにして、日本の映画女優としては最高だと私は思っている」(「アサヒ芸能新聞」昭和26年9月9日)
「ぼくは今まで『晩春』に次いで今度の『麦秋』が二本目のつき合いですが、前の場あいよりすべての面で成長していると思う。原節子のよさは内面的な深さのある演技で脚本に提示された役柄の理解力と勘は驚くほど鋭敏です。演技指導の場あいも、こっちの気持ちをすぐ受けとってくれ、すばらしい演技で解答を与えてくれます。単に顔面筋肉を動かす迷優はずいぶん多いけれど彼女のようなのは数えるほどしかいません。演出家の中には彼女の個性をつかみそこね大根だの、何んだのと言う人もいますが、その人にないものを求めること自体間違っているのです。日本の映画界は大スターに求めることの余りに大きく多いことが欠点でしょう。国際舞台へ出て恥ずかしくない人というと彼女はたしかに有資格者の一人でしょう……」(「時事新報」昭和26年9月14日)(田中眞澄編1993.9.20[1989.5.1]「小津安二郎戦後語録集成 昭和21(1946)年-昭和38(1963)年」フィルムアート社より 抜粋)
Monday, June 6, 2011
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